当局関係者様へ
 
 なんのためにこの手紙をタイプしているのか、
自分でもよく分からない。自分が最近なぜこんな
行動をとっているのか、その理由を朧気ながらも
書き残しておきたいのかもしれない。このごろは、
自分で自分のことがよく分からない。
道理をわきまえ、知力を備えたごく普通の若者、
それが自分の期待されている姿だと思う。
ところがこのところまともでない不埒な考えが
次々に頭に浮かんではこの身を苛む様になった。
こうした妄想は、しつこく付きまとい、
よっぽど気持ちをはりつめないと、有益で
前向きな仕事には打ち込めない。精神科の医者にも
診てもらった。恐怖心と暴力的な衝動が代わる代
わるに現れる。ひどい頭痛に悩まされることも度々だ。

 考えに考えた末、妻キャシーを殺すことにした。
今夜、電話会社へ迎えに行ったあとに殺すつもりだ。
妻のことはとても愛している。自分にはもったいな
い女だと思う。どうして彼女を殺すのか、はっきり
特定できるもっともな理由は何もない。単なる我侭
なのか、自分の行動が確実に引き起こす騒ぎに取り
乱して欲しくないからなのか、それすら分からない。
今のところ一番はっきりしていることは、この世が
生きるに値しないと自分が思っており、潔く死ぬ覚
悟が出来ていること。愛する妻にこんな世界でひと
り苦労をさせたくないということだ。なるべく苦し
ませずに殺そう、そう思っている。

 同じような理由から、母の命も奪わなければなら
ない。かわいそうに、母は彼女に相応しい幸福な人
生を送って来なかった。独占欲の強い横暴な父の犠
牲になった。同情すべき女性なのだ。

 有人の邪魔が入った。66年8月1日午前3時。
二人とも死んだ。なんとも残酷な殺し方に見える
と思う。だが事を素早くやり遂げようとしただけ
なんだ。自分の生命保険が有効なら、この週末に
切ったくだらない小切手がちゃんと支払えるよう
に手配して欲しい。借金も全て返済してほしい。
自分は25歳の経済的に自立した大人なのだから。
金の残りは精神医学関係の財団に匿名で寄付して
もらいたい。もっと研究が進めば、この種の悲劇
がこれ以上起きるのを防げるかもしれない。

 我々が飼っている犬は妻の実家へ預けて下さい。
キャシーはショシーをとても愛していた、とひと
こと添えて。最後にもうひとつ聞いてもらえるな
ら、検視解剖のあとは火葬にしてもらいたい。

       チャールズ・ホイットマン

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

どんな思いで死んでいったのだろう。

愛する妻と、愛する母を殺してから。

25歳。

25歳。

あたしは25歳になるころ、生きてるのだろうか。

あと7・8年。

遠いようで近い その時まで

この体はまだ機能しているのだろうか。

嫌だ。
嫌だ。 
嫌だ。

彼のように遺書をつづる自分が
すぐそこに見えそうで。

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